東京小世界

凪のような日常に身を浸す毎日。
忙しいことは忙しいのだが。
東京という場所が、私は好きだと思う。
昔は冗談じゃないと思っていた。田舎のほうが余程いいと。最近はそう思わない。
平屋や竹林や干し柿や暗闇や地蔵やはすむかいの家の息子さんの噂や町に一軒しかないひなびたスーパーや無人駅もいいが、ビルやネオンや観覧車や洒落たバッグが並ぶショーウィンドウや小粋な料理屋や広い公園やラブラブカップルや変な匂いのある、東京という所もおもしろいと思う。
モノが溢れているのは東京も田舎も同じだが、いいところも悪いところも全部ひっくるめて質が違うように感じる。湿度や温度や、もっと微細な、積み上げられてきたもの。
東京では、駅前にきれいで便利なデパートがあり会社帰りのOL達が華やかな声をあげている。かと思えばその近くで灰色の服を着たおばあさんが色んな人をつかまえて、調子が悪くてファミリーレストランで休みたいから三百円恵んでくださいと頼んでいる。
この東京で、起こりうる全てのことが同時に起こっているような錯覚を受ける。
色々なことがあるから、新宿界隈の有名人が根津あたりでは意味を為さない。
小さな世界なのに。
こんな小さい世界でも、知ることのできることは少ない。
知っていると思っても次の瞬間には変化している。
確かに掴んだものが錯覚に変わる。
一貫性を求めたく思ってもするりと逃げていってしまう。
きりのない世界の中で生きている。
というくだらないといえばくだらないことを、東京では延々と考え続ける。時もある。
この頃毎日曇り空が続く。
7月に入って梅雨が本格化したそうだ。
湿り気に弱い私は毎日部屋を除湿している。
時折夏まがいの風が通り抜ける。
もうすぐ本当に暑くなるだろう。